陽子線治療について

陽子線って何ですか?

元素の中で最も軽い水素原子の原子核は1つの陽子から構成されます。その陽子が数多く束になって加速された状態を陽子線と呼びます。

陽子線治療はX線治療とどう違うのですか?

ともに放射線の仲間ですが、物理的な性質が全く異なります。X線は体の表面でエネルギーを多く放出し、だんだんと弱まっていきますが、陽子線は体の奥深くで最も効果を発揮し、裏側へ貫通しない特徴があります。正常な臓器を保護しつつ、がんを叩くことが可能な陽子線治療は国内外で普及しつつある先端医療です。

陽子線治療を受けたら、すぐがんは治るのか(消えるのか)

すぐには消えません。陽子線治療は腫瘍や組織を切除するわけではないので、治療後すぐに体内からなくなる、見えなくなる、ということはありません。 陽子線の照射によって活動性を失ったがんの残骸(死んだ細胞)は体内にゆっくりと吸収されながら、小さくなっていきます。放射線に対するがん細胞の反応の度合い(感受性)は細胞種によって異なり、治療期間中に急激に小さくなるものもあれば、腎がんの様にかなり長い年月を掛けて縮小するものもあります。
がんの残骸が体内で処理されるまで、画像上には映っている状況が続きます。そのため治療後の経過観察システムを作っています。治療後の検査結果を送付すると当センターの専門医が確認し、その変化が陽子線治療の順調な経過であるか、コメントを添えてお返しします。

陽子線治療はどんながんでも治療できますか?

局在する固形のがんが対象です。「陽子線により効果が期待できるがん」を参照ください。
白血病や広範な転移病巣など、全身性のがんは適応になりません。また、胃や小腸、大腸のように動きの活発な管状の消化管は穿孔(穴が開いてしまう)可能性がありますので、陽子線治療の対象外です。一方で、食道や直腸癌の手術後の局所再発は治療の対象となります。

再発した場合、治療はできますか?

再発の仕方で可否が分かれます。手術後の再発であれば、部位により適応となることがあります。例えば、直腸がん術後の骨盤内再発は陽子線治療の良い適応です。一方、放射線治療後の再発の場合は、その腫瘍が放射線治療に対して抵抗性があったと言うことになりますので、再照射による高い治療効果は期待できません。また、初回治療時の照射範囲と再照射の範囲が重複する場合は壊死や潰瘍など、高いリスクが伴うことになります。

転移したがんは治療できますか?

がん細胞は全身に散らばっている状態ですので、抗がん剤などの全身療法の状況を考慮しつつ、局所療法である陽子線治療に意義があるとキャンサーボードで判断された場合は治療を行います。

一般の放射線治療では、副作用として、例えば髪の毛が抜ける、食欲不振や嘔気などがあると聞いていますが、陽子線治療の場合も副作用とか後遺症などがありますか?

障害の発生頻度はX線治療よりもずっと低いのですが、腫瘍に近接する正常組織はダメージを負うことがあります。口腔に照射される場合は早期にひどい口内炎になったり、肺がんの治療後、しばらく経ってから肋骨が折れたりすることもあります。陽子線治療は局所療法ですので、頭に照射しなければ脱毛の心配は全くありません。

治療はどのくらいの日数がかかりますか?

陽子線治療は、基本的に1日1回の照射を毎日行います。当センターでの治療は、短くて8回、長くて38回を週5回の頻度で照射する治療方針(プロトコル)を採用していますので、治療照射の期間は2~8週になります。がんの種類や部位、大きさ等で、治療期間が決まります。

一回の治療時間はどのくらいですか?

陽子線が出ている時間は1~2分ですが、呼吸に合わせて照射する必要のある肝臓や肺などの部位はもう少し時間がかかります。治療室に入室してから退室するまでの時間は約15~30分で、その多くは身体の位置をmm単位で調整するために使われます。

治療には何回照射をするのですか?

短くて8回、長くて38回を週5回の頻度で照射する治療方針(プロトコル)を採用していますので、治療照射の期間は2~8週になります。がんの種類や部位、大きさ等で、治療期間が決まります。

治療は通院ですか。入院が必要ですか?

入院の必要はありません。陽子線治療は体に負担が少ないので、原則的に外来で治療を行います。遠方の方は隣接するホテルやウィークリーマンション、民宿からの通院が多いです。入院治療が検討されるのは医師が必要と判断した方のみとなります。

陽子線治療は重粒子線治療とどう違うのですか?

加速させる粒子に陽子を用いるのが陽子線、炭素イオンを代表とする重い粒子を用いるのが重粒子線治療です。どちらも体の奥深くで効果を発揮する優れた物理的性質を持ちますが、重粒子線の方が細胞の殺傷能力が高いと言われています。2013年末までに約12万人の患者が世界中で粒子線治療を受け、その内86%が陽子線、11%が炭素線で治療が行われました。治療効果に極端な差が無いというのが、両方の治療法に携わったことのある菱川センター長(兵庫県立粒子線医療センター前院長・現名誉院長)の見解です。

陽子線治療と重粒子線治療のどちらを選択すれば良いのですか?

どちらも同じ粒子線治療ですので、主治医やセカンドオピニオンを受けられる医師にご相談し、病院へのアクセスや特色を踏まえた上で選択されると良いでしょう。

陽子線治療を受ける年齢制限はありますか?

高校生から90歳以上まで治療の実績があります。年齢制限と言うよりも、全身状態(PS: Performance Status)が良いこと、理解があること、30分程度の治療体位の保持が可能であることが求められます。

外科手術や化学療法など、他の治療方法と陽子線治療のどちらを選ぶべきでしょうか。

是非、セカンドオピニオンをご利用ください。標準的な治療と陽子線治療の比較を客観的な立場でアドバイス差し上げます。

新たに取り組んでいる治療はありますか?

基本的に乳がんの治療は手術が第一選択となりますが、従来の放射線治療とは異なり、陽子線は病変に集中して根治的な線量を照射することができるので、メスを一切入れずに乳がんを治療できる可能性があると考えています。臨床研究の段階にあり、2015年6月16日に最初の患者さんへ治療照射を行いました。 2017年夏より、臨床試験(第Ⅱ相試験)への参加を希望される患者さんを受付けを開始しました。

回転ガントリーとは何ですか?

回転ガントリーとはあらゆる角度からの照射を可能とする装置で、“小回り”の利く陽子線でのみ実用化されています。当センターは回転ガントリーを3室所有している国内唯一の施設です。

乳がん治療装置の開発・研究はどんな内容ですか?

乳がんの標準的な治療法は切除術であり、切らずに治す陽子線治療は生活の質(Quality of Life)の観点から非常に期待されています。しかし、乳房特有の柔らかさや皮膚線量の低減といった技術的な難題を解決する必要がありました。当センターは正確に陽子線を照射するための乳房の固定法や照射技術、皮膚ケアに注力して研究開発を進めております。

陽子線治療のセカンドオピニオンとは何ですか?

セカンドオピニオンとは、一般的には、病気や治療方針について主治医以外の医師の意見を聞くことです。 当センターで行っている陽子線治療のセカンドオピニオンは、陽子線治療が適応となるかどうかを中心にお話させていただきながら、患者さんにとってより良い治療法をご提案いたします。

早期発見、早期治療と言われていますが、どのステージであれば陽子線治療が受けられますか?

治療の意義があるか否かが最大の判断基準ですので、ステージⅣであっても、適応となる方はいらっしゃいます。

現在、放射線治療を受けておりますが、放射線治療を受けているときに再発した場合に陽子線治療はできるのでしょうか?

同じ場所への治療照射は線量が重複して、高くなるため原則的にできません。ただし、少し離れた場所に再発して、前回の治療で放射線が当たっていない場合、かつ陽子線で治療することに意義があると認められた場合は治療できます。ケースバイケースですので、まずはご相談ください。

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