当センターで治療できるがん
2024年6月から、早期肺がん(Ⅰ期からⅡA期までの肺がんに限る。手術による根治的な治療法が困難であるものに限る)が公的医療保険適用となります。
2016年小児がん・2018年前立腺がん・頭頸部がん・骨軟部腫瘍の一部・2022年大型の肝臓がん・肝内胆管がん・進行膵がん・局所大腸がん術後再発(いずれも、手術による根治的な治療法が困難であるものに限る)も適用開始されております。治療費の負担軽減となり、陽子線治療が、より身近な治療となりました。
治療部位
前立腺がん
前立腺がんは日本国内で最も多く粒子線治療が行われている部位であり、その信頼性は高く、尿失禁を起こすことなく、男性機能(勃起、射精機能)の温存が期待できます。
乳がん
【乳がん治療(臨床試験/PhaseⅡ)の再開について】
乳がんの陽子線治療については、PhaseⅠ試験(4例実施)、PhaseⅡ試験では10例を実施いたしました。PhaseⅡ試験では、「10症例終了後に乳がん粒子線治療研究会にて報告ならびに審議し、この研究の整合性と妥当性について検証する」と定められており、当該研究会を2021年7月29日に実施いたしました。その結果、有効性と安全性について問題ないと判断されました。
今回、PhaseⅡ試験では、症例数20例以上を予定しておりますので、残りの10例以上の募集を再開いたします。陽子線治療費用は、メディポリス医学研究所が負担しますが、陽子線治療以外の検査や診察費用等は、自由診療として患者さんご自身のご負担となります。
【乳がんの乳房温存手術後の術後照射(自由診療)について】
乳がんの乳房温存手術に再発防止として放射線治療が行われますが、陽子線治療は肺や心臓に照射されないため、晩期の副作用が減少し、欧米では陽子線治療が多く用いられています。
日本では先進医療や保険診療として行えないため、自由診療となりますが、当センターでも該当する患者さんの治療を受け付けております。
当センターでは、陽子線を用いて病巣をピンポイント照射することにより、肺や心臓など正常組織へはほとんど照射されない『早期乳がんの陽子線治療』及び『乳房手術後の陽子線治療』を行っています。
肺がん
扁平上皮がんや腺がんなどの“非”小細胞肺がんで、遠隔転移や悪性胸水・心嚢水を伴わないことが陽子線治療を受ける際の条件となります。
放射線治療と同様、画像上は放射線肺臓炎は必発しますが部分的で症状が軽いまま自然に治まるため、低肺機能や高齢、手術不能/拒否の患者には適した治療と言えます。
肝がん
腫瘍径や位置の条件が良くないためにRFA(ラジオ波熱凝固療法)が困難、TACE(肝動脈化学塞栓療法)による腫瘍制御が不良、肝機能が悪く手術が困難といった場合は陽子線治療の良い適応となります。また、手術不能な巨大な肝がんも相対的に陽子線治療が適切と判断される場合があります。
膵がん
手術後の再発や切除不能な局所進行膵臓がん患者さんを対象として、陽子線と抗がん剤を組み合わせた治療を行っています。通常のX線治療では副作用の観点から、50Gy程度の線量が限界ですが、当センターでは線量分布に強弱の工夫を付ける事で、最大67.5GyE/25回の陽子線を腫瘍に照射しています。
腎がん
切除が第一選択ではありますが、医学的な理由で手術が不能な場合は治療適応となります。腎がんは放射線抵抗性であるとされており、照射後はかなり長い年月を掛けて縮小する傾向があります。当センターでの症例数はまだ多くはありませんが、ほとんどの患者さんは治療後、腫瘍サイズに変化がなく、活動が停止している状態(SD: Stable Disease)に至ったと判定しています。
頭頚部がん
手術を行う場合は顔の変形や眼球の摘出を伴うことがあるので、顔にメスを入れたくない方には陽子線治療が原則として有効であり、X線治療では効果が乏しい悪性黒色腫に対しても、陽子線治療はとても良い反応を示します。リンパ節転移がある場合は、陽子線治療の事前にリンパ節の摘出手術(郭清)の実施をお願いする事もあります。
骨軟部がん
一般的に肉腫はX線抵抗性であるのに対し、粒子線は効果的である事が分かってきました。 基本的に単発性で限局(リンパ節転移や遠隔転移が無い)しており、病理的に悪性と診断された骨軟部腫瘍が適応となります。大腿部などに生じた非常に大きな腫瘍であっても、照射方法を工夫することにより対応が可能です。
対象となる方
- 他医療機関からの紹介で、主治医によるがんの確定診断がついている患者さん
- 陽子線治療による治癒・回復が見込める患者さん
- 病気についての告知を受けており、陽子線治療を受ける意思を持っている患者さん
- 歩行や身の回りのことがひとりでできる患者さん
適応条件
- 対象部位に対する放射線治療の既往がないこと。
- 病理診断がついていること。
- 評価可能な病変を有すること。
- 原則として腫瘍の最大径が15cmを超えないこと。(腫瘍の最大値については部位によって異なる場合があります)
- 広範な転移がないこと。
- 30分間程度、同じ姿勢で動かずに寝ていられること。
※副作用と留意点
陽子線治療による副作用(有害反応)には、治療期間中に起こるもの(急性期障害)と数ヶ月~数年経ってから起こるもの(晩期障害)があります。治療期間中に生じた反応は治療後にゆっくりと回復します。
例えば照射後の皮膚は軽く日焼けしたようになり、痒みやヒリヒリ感が出現することがありますが、照射終了後ほとんどの方は2~3週間で軽快します。一方、数年経ってから起こった障害に対しては、対症療法が基本的な治療となります。陽子線の反応は、年齢や病気の種類、照射された部位(臓器)、線量などにより、一人ひとり異なります。患者さんごとに、治療で発生し得る副作用やその対処法について、事前に医師または看護師が十分な説明を行います。