進行すい臓がんの陽子線治療

進行すい臓がん治療への取り組み

すい臓がんの患者は男女とも戦後から年々増加し、1990年代以降はゆるやかに増えています。年齢でみると患者数は60歳以降に増加し、高齢になるほど増える傾向にあります。がん対策情報センターによると2003年から2005年にがんと診断された人の5年相対生存率は全てのがんの平均が58.6%であるのに対し、すい臓がんは7%で、治りにくいがんといえます。すい臓は他の内臓に囲まれ体の奥にあるために、早期発見が難しく診断機器が進歩した今日でも、すい臓がんと診断された時には80%が切除不能な進行すい臓がんであり、また切除できても再発することが多いため、生存率が低い状況にあります。

進行すい臓がん治療への取り組み

すい臓がんの治療は切除可能ながんでも、手術だけで治せる可能性は低く、手術後の抗がん剤治療が標準的な治療とされています。手術不能ながんで、転移がみられない場合は、抗がん剤治療もしくは放射線治療と抗がん剤治療の併用になります。陽子線治療の場合も抗がん剤との併用が必要になります。

すい臓がんの放射線治療で重要なポイントは、すい臓と隣り合う胃・十二指腸・小腸にあたる放射線量を安全な量に抑え、かつ、がん病巣には死滅する量の放射線をあてることにあります。胃や腸は放射線に弱く50グレイ以上あてると穴が開いたり、潰瘍を起こし、それが致命傷になる可能性があります。一方、がんを死滅するのに必要な放射線量は60グレイ以上とされています。しかし、通常のX線の場合は、周囲の腸にあたる放射線量を抑えるためすい臓への線量は50グレイ程度が限界になります。当センターでは線量の与え方に強弱を付けることで、最大67.5グレイの陽子線をがん病巣にあてています。

進行すい臓がん治療への取り組み
進行すい臓がん治療への取り組み

より安全に照射するためには、がん病巣と胃・腸との距離を少しでも離すことが重要になります。状況によっては、事前に抗がん剤治療を行い、腫瘍を小さくしてから陽子線治療を行います。さらにすい臓がんには血液やリンパの流れに乗ってがんが転移しやすい特徴があります。つまりCTやMRIに写らない細胞レベルで、見えないがんが潜んでいる可能性があります。そのため陽子線治療後は、かかりつけ医のもとで、抗がん剤治療を続けてがんの芽を絶やすことが確実に治すポイントです。

当センターでの陽子線治療終了後4年、経過順調でお過ごしの患者さんの経験が、新聞に連載されました。

朝日新聞生活面「患者を生きる」

【参考】朝日新聞生活面「患者を生きる」(2015年6月23日~27日)